スタジオ・アッズーロ

1982年、デザイナー集団メンフィスから舞台装置の制作依頼を受けたのを機に、実験的なアート映像の制作研究集団としてミラノで活動を始める。カメラマン出身のチリフィーノ、映画制作のローザ、グラフィック、アニメーション出身のサンジョルジの結成メンバーに加え、1995年からインタラクティブ・システムのステファノ・ロヴェーダが参加。彼らの作品の原点である環境ビデオとは、「空間と、音声と、一群のモニターが映し出す様々な画像との間に一つの関係を打ち立てようとするもの」。空間軸のみならず時間軸をも備えたインスタレーションである。現在彼らはコンピュータの世界でも語られる「インタラクティブ」をキーワードに作品を展開中である。

[戦いの断片(戦いの全景より)]

このインタラクティブなインスタレーションは、もともとルッカの町を囲む長大な城壁の内部空間のきわめて印象的な場所のため我々が制作した「戦いの全景」(1996)の縮小バージョンである。この城壁は、今日に至るまでほぼ原形を残したまま保存されてきた偉大な文化遺産で、何世紀にも渡り、現代の記号文明の侵略も含めあらゆる形の侵入からこの町を守ってきた。いわば時間の痕跡を満載し、我々を別の時代へと運ぶ古代都市の魅力を保つ町。戦争の光景と喧噪とを再現しようという構想に基づいた我々のプロジェクトは、こうした文脈のなかから生まれてきたものである。
その構想の実現のため我々は一枚の素晴らしい絵画を取り上げた。「遠近法という新技法」を最も大胆に用いた偉大なルネッサンス画家の一人パオロ・ウッチェッロの『サン・ロマーノの戦い』である。
この作品は、まるで記憶の残滓に再び光を当てるかのように、地面に掘られたいくつかの穴から構成され、その内部でビデオプロジェクターが自然の要素(水、葉、砂など)を映し出す。この映像は、観客が発する叫び声や音や手をうち鳴らす音によって作動し、さまざまなアクションの断片—肉体をぶつけ合って戦う人物たちの短い即興劇—が現れる。だが、これが我々が語ろうとする戦いなのだろうか?それとも、インタラクティブな環境のなかで響き渡る叫び声のなかで、観客が興じる戦いなのか?あるいはまた、電子的な映像による戦争のメタファーなのだろうか?
さまざまな意味が交錯し合い、観客の声の驚くべき表現力が発見される。それは、スイッチを作動させ、映像への願望を、まるでパフォーマンスのように響き渡らせる。一方、そこには、古い過去の戦いの引用を現代のテクノロジーへと結びつける何かが微妙に現れる。実際、現代の戦争では、新しいパワーバランスは、爆弾よりもむしろ、瞬時に観察し、目撃し、「凝視する」センサーや電子探知機の力の上に築かれる。ポール・ヴィリリオが語る通り、武器の力より頭の働きの方が死命を制する西部劇の決闘のようでもあり、<まなざしの一撃>の方が<火器の一撃>よりも大きな効果を発揮するようだ。知覚されたものは、すでに失われたものと同じだからだ。
<まなざしの一撃>は、こうした<インタラクティブな環境>では、空間のなかに記憶を呼び覚ます役割を果たすが、それは観客が訪れ、参加して、はじめて完成される。彼らのアクションは、共有され、社会化された空間のなかで展開される。我々がナチュラル・インターフェイスと呼ぶものを自在に用いる彼らの対話は、我々を巻き込み、我々を、そのアクションを驚きの眼差しで見守る観客へと変えていく。

クレジット
伊英翻訳:リア・ベレッタ
協力:ミホプロジェクト