幾何学的形態測定学について

幾何学的形態測定学では生物学の進化や系統化の為に二次元形態の特徴点に標識点(ランドマーク)を打ち、異なる個体同士のランドマークから、形態変化の経過を検討し系統化を図っていく。これらの作業を薄板スプラインThin-Plate Spline(以後TPS)関数(Fred Bookstein1989)を用いて、形態とその局所的変形が発展した比較解析をおこなう。

分類思考と系統樹思考

幾何学的形態測定学が発展して来たフィールドとして、生物系統学が挙げられる。系統推定の第一人者である統計学者三中信宏氏は、著書「生物系統学」(1997、東大出版会)において、分類思考と系統思考に付いて全く無縁のものとして、分類構築と系統推定の関係を述べている。
科学的な系統推定と比較して、分類構築は直感的行為であって、人間の認知能力領域にかんする問題であり、推定されるべきパラメーターを設定しない、経験的検証可能な仮説構築をしていない。(三中、1997)
さて、冷静に考えてみれば、芸術の評価とは、まさに分類思考的である。
芸術作品に対する外界の認識から始まって、人間の認識に常に依存しているからだ。また、そのような立場から見れば、芸術家そのものも分類思考的判断によって、作品を作り上げている。
さてさて、とはいえ、ここで問題としたいのは芸術作品に科学というもが介在する事の不可能性を論じたい訳ではない。分類思考と系統樹思考というプロセスの理解が芸術の評価にも必要であろうと考えられる点から、本研究は始められた。ましてや、出来てしまった芸術作品には、系統樹思考を適用して行く事は可能であろう。