洛中洛外図について
中世近世絵画の代表的モチーフとして京都を描いた作品群に洛中洛外図がある。洛と呼ばれた平安京東地域は現在の京都を中心として、近世には秀吉によって開発された地域とほぼ重なるエリアである。これらの作品群は、その時代の絵画史料としても着目され、様々な研究のアプローチがおこなわれている。京都を描いた洛中洛外図は八十本以上が現存する(狩野1997)とされ、近年も、洛中洛外図屏風が世に出てくるようになって来た。研究の先達者である武田恒夫氏は都市空間と時系列から以下の第一の定型、変形、第二の定型の三種類の系列に分類した。
定型
第一の室町時代末期の景観を示しており、右隻は東山一帯を北から南へと洛中の下京を、左隻は北山から西を背景として洛中の上京を描き、それぞれの視点から描かれている。歴博甲本、上杉家本、東博模本、歴博乙本が現在確認されている。
変形
桃山時代の景観を示し、聚楽第やその跡地、二条城の建造や力関係の変化から、異なる視点から描かれる。聚落第図、や東博舟木本など。
展開(第二の定型)
二条城の慶長八年(1603年)に竣工以降、洛中は発展した。洛中を主に室町通を中心に東西に大きく分割し、左隻には愛宕山や嵐山など西山を背景に二条城を中心として描き、右隻には比叡山から因幡山まで東山を背景として、祇園会や秀吉ゆかりの建造物などを中心としながら、描いたもの。