地獄絵スタンプラリー vol.3 イベント実施レポート
2017年5月21日(日)岐阜県揖斐川町で開催された複合型タウンフェスティバル「揖斐川ワンダーピクニック」会場内で「地獄絵スタンプラリーvol.3」を実施し、約780名の来場者が参加しました。
地獄絵スタンプラリーとは?
「地獄絵スタンプラリー」は、IAMASの附置機関である産業文化研究センター[RCIC]が主体となって、2015年より取り組んでいる地域連携活動です。この活動は、揖斐川町で失われつつあった「地獄絵の拝観」の風習をヒントに企画した参加型イベントです。スタンプの絵柄は毎年更新し、3年参加すると全ての地獄絵巻物の場面を集めることができます。
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▲ 過去3年のイメージ
連携のはじまり
2014年10月、揖斐川ワンダーピクニック実行委員会からRCICへ地域連携の打診があり連携が始まりました。現地調査とヒアリングを重ねる過程で、揖斐川町には春と秋の彼岸の時期に限定公開される地獄絵があり、地域の人々は住職の法話とともに拝観し、その恐ろしさを学ぶという風習が現代において失われつつあることがわかりました。風習の復興と地域に眠る文化資源の現代的な活用方法について検討・企画したものが「地獄絵スタンプラリー」です。
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▲ 現地調査の様子(2014)
地獄絵の鑑賞支援としてのスタンプラリー
スタンプラリーという形式とした理由は、子供から大人まで参加できること、タウンフェスティバル会場内を周遊することで町並みや自然に触れてもらえること、ゴールを地獄絵を収蔵している一心寺とすることで来場者を拝観場所へ誘導できるためです。
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▲ 地獄絵スタンプラリー・マップ(2017/vol.3)
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▲ ゴール近くの展望台から見える揖斐川町の景色(2016/vol.2)
1年目:スタンプ収集による鑑賞支援
地獄について深く知るための仕掛けとして、スタンプを収集することで、地獄で行われる審判や刑罰の絵柄と解説が現れる仕組みを制作しました。
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▲ スタンプ台紙(2015/vol.1)色が付いている部分がスタンプ押下時に現れる絵柄と解説、刑罰の槍やそれによって吹き出す血などが現れる。
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▲ レーザー加工機を利用して制作したスタンプ(2015/vol.1)
2年目:スタンプ+音声による鑑賞支援
1年目のイベント実施時に参加者の様子を観察していたところ、大人は押印した解説文を読み理解を深めていた一方で、文字の読めない子どもには「地獄に行かないためには、悪事を働いてはならない」という本来の趣旨が伝わっていませんでした。未就学児でも理解できるようなインタラクションが必要だという問題点が浮かび上がりました。 2年目は、地獄での刑罰の様子をイメージした叫び声や、描かれている情景に合わせた不気味な音声がスタンプ押下時に再生される仕組みを備えた展示台を制作しました。結果、スタンプを押す行為を怖がる子どもや、地獄絵拝観後に怯えながら帰る子どもが現れました。
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▲ スタンプを押下する参加者(2017/vol.3)
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▲ 制作した展示台(2016/vol.2)
▲ 展示台試作、所定の位置に紙を置いて押下することで音声が流れる(2016/vol.2)
3年目:参加者の一体感創出のための「地獄絵フォトブース」
過去2年の実施に連続参加する方も現れたため、今年の実施では、参加者同士が参加する楽しさを共有できるような仕組みづくりをすることをテーマに「地獄絵フォトブース」を準備しました。 「地獄絵フォトブース」ではオリジナルのフォトプロップスを作成し、いろんな利用方法で多くの方に撮影を楽しんでもらえました。 このブースでスライドショー展示した地獄写真は、ディープラーニング(深層学習)の手法であるスタイルトランスファーという技術を用いて、一心寺の本堂で見ることができた地獄絵の筆跡や色彩などの特徴情報をAI(人工知能)に学習させ、フォトブースで撮影した写真に反映させています。あたかも地獄絵の中に入り込んだような写真を撮影することができます。
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▲ オリジナルフォトプロップスを利用した記念撮影
▲ スタイルトランスファーによる地獄写真
おわりに
▲ ゴールして特製ステッカーをもらう参加者
「地獄絵フォトブース」は、途中から山間部でのネットワーク通信の問題で地獄写真の変換が時間内にできないなどトラブルもありましたが、記念撮影の待ち時間にお話するなど、今までのスタンプラリーとは違った形で交流を行うことができました。 とても暑い中、トレッキングコースも含んだ地獄絵スタンプラリーへの参加、本当にありがとうございました。