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ソウル・オリンピック美術館での展覧風景

見学ツアーで訪れたDMZの風景

DMZで使われていたスピーカー

同じくDMZで使われていた音響機器

Park 李 Chang Shik氏の「Red Symbol」

スピーカーもオブジェも半ば水没している

観客はマイクで喋ることができる

コンピュータやアンプなど

オープニング・パフォーマンス

オープニング・パフォーマンス

オープニング・パフォーマンス

美術館内から見た作品

Golden Numbersの本

Golden Numbersの旗

概要

「Golden Numbers」はDMZ(韓国と北朝鮮の国境付近に設けられた非武装地帯)で使われていた巨大なプロパガンダ用スピーカーを使ったサウンド・インスタレーションです。この作品では0から36525までの数字が読み上げられます。この数字は1945年8月15日からの日数を意味し、2045年8月15日までの100年分の日数を数えることになります。また、古いラジオ放送の録音や符号化された信号音からリアルタイムに作り出される音響が断続的に加わり、マイクを使って自分の声をスピーカーから鳴らすこともできます。すべての音は円環上をゆっくりと動き、時計の針の動きや天体の運行にも似て、時間の経過や歴史の流れを暗示しています。マイクからの声は、誰もが時間の流れの中で生き、何らかの形で歴史に関与することを表しています。

背景

1945年8月15日、日本のポツダム宣言受諾によって朝鮮は日本の占領から解放されたものの、ソ連とアメリカによって北緯38度線を境界とする分断信託統治に移行しました。さらに、1950年6月25日に朝鮮戦争が勃発し、激しい戦闘が繰り返された後、1953年7月27日に休戦協定が結ばれることになります。

この時、軍事境界線に添って設けられた幅4kmの非武装地帯(DMZ)では、鉄条網や高圧電線が張り巡らされ、無数の地雷が埋め込まれるとともに、夜間には強力なライトが境界線を照らし、膨大な数の巨大スピーカーが亡命を呼びかけるプロパガンダを大音量で流していました。しかし、2004年夏に双方の合意により宣伝放送は中止され、スピーカー群は撤去されるに至ります。

DMZから撤去されたスピーカーやライト、鉄条網やフェンスなどはソウルへ運ばれ、展覧会「From the Fall of the Berlin Wall to DMZ」における作品素材となりました。この展覧会は、冷戦終焉の象徴であるベルリンの壁の崩壊と、最後の分断国家となった南北朝鮮の象徴であるDMZをテーマとして開催され、ナム・ジュン・パイクなど数十人の作家が新たに制作した絵画、彫刻、映像、インスタレーションなどを集めた企画展です。

内容

「Golden Numbers」は、DMZから運ばれた32個の巨大な軍用スピーカーを使ったサンウド・インスタレーションであり、ゆっくりとしたテンポで数字を読み上げ続ける韓国語の声、断続的に混じる抽象的でノイズ的な音楽、そして同じくDMZで使われていた軍用マイクを使って聴衆が喋る声、の3種類の音が再生されます。

読み上げられる数字は、0から始まり36525まで続きます。この数字は1945年8月15日からの日数を意味し、2045年8月15日までの100年分の日数を数えることになります。

[日付と日数の対応表]

数字は前ゼロを伴う5桁として表し、例えば、138は00138となります。数字は各桁を前から順に約1秒間隔で区切って読まれた後、約3秒間の無音が続きます。従って、約8秒ごとに新しい数字が読み上げるので、36526個の数字を読み上げるには、81時間余り(3日と9時間少々)かかります。ただし、数字を読む時間間隔は一定ではなく、少しずつ変化します。すべての数字を読み上げた後は、再びゼロに戻って読み上げを繰り返します。

数字を読み上げる声は、韓国で録音した十数人の韓国人の韓国語の発声を使用します。一連の数字は同じ人物によって読み上げられますが、日数が変わるごとに異なる人物の声にランダムに変わります。韓国語での数字の発声は以下の通りで、00138は、yung, yung, il, sam, palと読まれます。

0 ... yung
1 ... il
2 ... e^
3 ... sam
4 ... sa
5 ... o^
6 ... uk
7 ... chil
8 ... pal
9 ... gu

数字の読み上げは一定のテンポで常に続きますが、時折忍び入るように、抽象的な、あるいはノイズのような音が断続的に加わります。これらは、古いラジオ放送の録音やモールス符号やサイレンなどの信号音など200MB強のサウンド・ファイルを素材としてリアルタイムに作り出される音響です。これらの音は深い変調や断片化と再合成が行われているため、一聴しただけでは元の音を判断できませんが、ある種の雰囲気を醸し出すように作られています。

観客はスピーカーから流れる様々な音を聴くと同時に、スピーカーの近くに配置されるマイクを使って自分の声をスピーカーから鳴らすこともできます。このマイクもDMZで使われていた軍用マイクで、側面のボタンを押しながら喋ります。観客の声は、ただちにスピーカーから再生されるとともに、次第に細分化しながら木霊のように繰り返され、やがては消えていきます。また、消え去った声がしばらく後に突然甦ったり、他の音に影響を与えるようにもなっています。

32個のスピーカーは、完全な円を描くように直径11mの円環状に均等に配置されます。すべての音はそれぞれ固有の位置と速度を持っており、スピーカーによって作られた円環上を時計回りに、ゆっくりと、あるいは素早く移動します。従って、聴衆は様々な音が周回運動をしているように感じ、ある音が他の音を追いかけたり、追い抜く様を聴くことができます。

ただし、実際には32個のスピーカーのうち、等間隔に位置する8個のスピーカーを音響再生に用います。また、ひとつのスピーカーは9個のドライバー・ユニットを持ちますが、このうち1個のユニットのみを使用します。これは、ひとつのユニットであっても、アンプのボリュームを絞らなければならないほどの再生能力を持っているためです。つまり、DMZでは想像を絶するような大音量でプロパガンダを流していたことが伺えます。

構成

「Golden Numbers」は以下の機器によって構成されています。

  • マイク
  • スピーカー(32個)
  • オーディオ・アンプ(8ch)
  • オーディオ・インターフェース(Roland FA-101)
  • コンピュータ(Apple PowerMac G4/1GHz/512MB)
  • オリジナル・ソフトウェア
  • 各種ケーブル
  • 設置面積 12m×12m

展覧

「Golden Numbers」は展覧会「From the Fall of the Berlin Wall to DMZ」のために委嘱された作品であり、韓国の美術家であるPark 李 Chang Shik氏が制作した「Red Symbol」と共に展示されました。「Red Symbol」は故ヨハネ・パウロ2世(ローマ教皇)の頭部と手から構成される赤いオブジェです。「Golden Numbers」と「Red Symbol」は、共同作品として構想され、これらを合わせて「東の夢(Dream of East)」と呼びます。

展覧会の会期と開催場所は以下の通りです。

謝辞

この作品は以下の方々の協力を得て制作しました。お名前を記して、感謝いたします(順不同、敬称略)。

Park 李 Chang Shik, Noh Joe Cheul, Yim Minju, Seo Hyojung, 佐藤幸衛, 野路千晶