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1997.03.21-04.20 展覧会「World Remix」, ジーベック・ホール, 神戸
1998.03.05-03.13 展覧会「infodepot」, ソフトピア・ジャパン, 大垣市
1998.07.24-07.26 展覧会「infodepot」, 東京ビッグサイト, 東京
Word Remixはインターネットを通じて全世界に散在するサウンドを探索し、リミックスするWorld Wide WWW(以下WWW)コンテンツです。世界中には何万台ものサーバが稼動しており、数えきれない程のサウンドが収められています。しかし、我々はそのサウンドの多くに辿り着くことはありません。あるWWWページを訪れて初めて、そのページに貼り付けられたサウンドを聴くことができます。ページを彩るために使われている効果音であれば、その存在を意識することなく通り過ぎてしまうものです。
そこで、Word Remixは世界中のサウンドを探索し、ユーザの元へと送り届けます。具体的には、Word Remixは世界中のWWWサーバから集めたサウンドデータのデータベースを持ち、Word Remixに接続するユーザに対して、データベースの中からランダムに選んだサウンドを鳴らすように指示します。ある時はテクノとベートーヴェンが出会い、革命家の演説が紛れ込むかもしれません。また、ある時は観光案内とニュースが混信し、波音が警告音にかき消されることもあるでしょう。このようにしてWord Remixは未知の音への水先案内人として、そして気紛れで我が儘なDJとして振る舞います。
Word Remixコンテンツを見るには、ShockwaveプラグインがインストールされたWWWブラウザNetscape
Navigatorによって行います。これらは無料で提供されるポピュラーなクライアントソフトウェアですので、インターネットに接続する環境さえあれば、誰でも手軽にWord Remixを楽しむことができます。従って、Word Remixによって世界中の様々な場所で様々なユーザが様々なサウンドを鳴らし、総体として惑星規模のリミックスを行うことを目指しています。
Word Remixは大きく分けて次の3つの部分から構成されています。
(1) 検索ロボット
検索ロボットは全世界のWWWサーバ上に存在するサウンドを探し出します。これは一般的な検索ロボットと同じく、リンクを辿りながら様々なWWWページを検索していきます。そしてWWWページからリンクされているサウンドデータを見つければ、そのURLをデータベースに登録します。現在の検索ロボットはAIFF及びWAV形式のサウンドデータを対象にしています。また、データベースに登録されたURLの妥当性を確認するエージェントプログラムが定期的に動作しています。つまり、あるURLで示されるサウンドデータが存在しなくなれば、そのURLをデータベースから削除します。Word Remix検索ロボットとエージェントはJava言語で書かれています。
(2) サーバ
Word Remixをクライアント(ユーザ)に提供するサーバは一般的なWWWサーバ(HTTPサーバ)です。また、クライアントからの要求に応じて、データベースに登録されたサウンドのURLの中から適当なURLをクライアントに返します。さらに、データベースに登録されたURLに関する情報や、WWWページのアクセス状況に関する情報などを提供する役割も持っています。サーバでの処理はPerl言語によって書かれたCGIによって行われます。
(3) クライアント
クライアント(ユーザ)は、一般的なWWWブラウザによってWord Remixにアクセスします。クライアント。サーバから返されたサウンドデータのURLによって、そのサウンドをダウンロードし実際に鳴らします。この時同時に4つまでのサウンドが鳴ります。またクライアントは、その動作状況をアニメーションとして表示したり、サウンドの所在を世界地図上に表示します。また、クライアントが独自のサウンドをWord Remixのデータベースに登録できるようにもなっています。これらのクライアント側で動作するプログラムはHTMLをベースにJavaScriptとLingo(Shockwave)によって書かれています。
このような3つの部分が連動してWord Remixは動作しますが、ユーザからはひとつのWWWページとして見えます。しかし、このページは常に拡充される膨大な量のデータベースを元に世界中の様々なサウンドをリミックスし、変化し続ける音をユーザにもたらすわけです。
システム・ダイアグラム |
(1) オートマティックなコンテンツ
Word Remixを既存のメディアに例えれば、最も似ているのはラジオかもしれません。ユーザには音の選択権が与えられておらず、Word Remixが選ぶサウンドを受動的に聴くことができるだけです。唯一、ラジオ局にリクエストを出すように、ユーザは自らのサウンドを登録することができるだけです。
このことを否定的に考えれば、Word RemixはWWWが本来持っているインタラクティブ性を欠いていると言えるでしょう。しかし肯定的な見方をすれば、ユーザはただ耳を傾けるだけで、何の苦労もなく次々と見知らぬサウンドに巡り合うことができます。
さらに重要なことは、一人の人間が探すことが労力的にできず、順番に聴くことが時間的にできないほど膨大なサウンドデータがWWW上にある、ということです。Word Remixが用意したメカニズムでなければ、世界中に散在するサウンドを聴くことができないに違いありません。これはサウンドに限らず、様々な種類のデータについても同じことです。つまり、Word Remixはサウンドを題材にしながら、もはや人間の能力を遥かに超えてしまった広大な情報の海を象徴的に表現しているのです。
(2) コンテンツなきコンテンツ
Word Remixはコンテンツを持たないコンテンツと言えます。Word Remixは実際にはサウンドデータそのものを持たず、世界中のどこかのサーバに存在しているサウンドを鳴らすようにクライアントに指示するだけだからです。それゆえに、世界中のサーバに存在するサウンドが変化すれば、Word Remixが鳴らすサウンドも変化することになります。従って、Word Remixにはメカニズムだけがあり、実体としてのコンテンツが存在しないわけです。従来の音楽作品や美術作品、あるいはマルチメディア作品には、かならず中身(コンテンツ)がありますから、Word Remixは極めて奇妙な特性を持っていると言えます。ただし、このような特性はWord Remix自体の特性ではなく、動的にデータとリンクが生成され、いつのまにかそれらが消滅するWWWが持つ特性です。Word RemixはWWWの特性をストレートに取り入れた新しい形態の作品となっています。
(3) コンテンツによる情報操作
Word Remixは世界中のサウンドをランダムに鳴らしますが、真にそれがランダムである保証はありません。なぜなら、Word Remixが持つ検索ロボットがどのページから検索を始めるかによって、その結果が何らかの偏りを持つであろうからです。仮に検索ロボットが世界中のサーバを偏り無く検索したとしても、そもそも世界中のサーバが世界中のサウンドを偏り無く登録しているとは言えません。サーバの設置台数が多いのはアメリカと日本であり、これらのサーバは自国の音楽や音を数多く持っているに違いないからです。概念的にはインターネットやWWWは世界中を遍く網羅するネットワークですが、実際には極めて偏った発展をしているのですから、そこから得られる結果も当然偏ったものになります。従ってWord Remixは偏った世界をリミックスしているのだと言えます。
さらに、Word Remixを恣意的に何らかの目的に従った動作をするようにプログラムすることも技術的には簡単です。例えば、特定の音楽や演説が流れる頻度を高めて、それらをプロモーションすることができます。このように考えると、一般には、公正と思われているサーチエンジンやディレクトリサービスが本当に公正である保証はないことに気がつきます。このように、Word RemixはインターネットやWWWのメカニズムを利用しているために、インターネットやWWWの欺瞞や危険性をも表現していると言うことができます。
以上のように、Word Remixは世界中のサーバに登録されたサウンドデータを検索し、データベースを構築しながら、クライアントマシン上で世界中のサウンドをリミックスするネットワーク作品です。Word Remixは世界中のサウンドを楽しむ娯楽的な作品であると同時に、Word Remixが利用しているインターネットとWWWのメカニズムと形態について再考を迫る作品となっています。
Version 1:
コンセプト | 赤松正行 | |
サーバプログラム | 渡辺敬介 | |
クライアントプログラム | 赤松正行 |
Version 2:
コンセプト | 赤松正行 | |
検索プログラム | 木野村裕也、大塚晃子 | |
サーバプログラム | 穴見和朗 | |
クライアントプログラム | 赤松正行、草野あけみ | |
ページデザイン | 草野あけみ |