soundtronics
soundtronics(サウンドトロニクス)
赤松正行が開発したリアルタイムにサウンド処理を行うコンピュータソフトウェア。動作原理としては途切れなく録音を行うと同時に、録音した音響を再構成して再生を行う。周囲の音響変化に応じて自動的に動作を変更する。このため複数のsoundtronicsを設置する場合には音響的な相互作用を生み出す。またパフォーマンスやリミックスにも用いることができる。
soundtronics type-Bの画面
サウンドトロニクスとは
soundtronicsはコンピュータによる音響反射板です。原理的にはsoundtronicsは周囲の音を常に録音しており、記録された音を細分化し再構成して再生します。周囲が無音であればsoundtronicsも沈黙を守りますが、ひとたび音が発せられるや否やsoundtronicsはその音を捕捉し、切り刻み、合成します。テープループやディレイあるいはミュージック・コンクレートのようですが、全てをコンピュータ内部でデジタルに処理し、偶然性と規則性を合わせ持ったアルゴリズムによってコントロールすることで、オートマティックなカットアップとリミックスを実現します。
さらにsoundtronicsは録音された音量に応じて自らの動作を自動的に変更します。また録音された個々の音響は寿命を持っており、再生される度に老化し、やがては死滅します。つまりsoundtronicsは環境に応じた反応と生起消滅を行うある種の生物的な特徴を備えているわけです。
そこで複数のsoundtronicsを配置すれば、それらは相互干渉を引き起こし、多層的な音響空間を形成します。そこには磁場(magnetic field)のように取り込み放射される音の力学系が生まれます。これは空気振動によるコンピュータ・ネットワーク、あるいは音の食物連鎖、エネルギー交換と考えることもできます。これがsoundtronics fieldです。
soundtronics fieldでは聴取者は演奏者となり、再び聴取者となり、また演奏者となります。すべての音は等価であり時系列は変化し再構築されます。そして粒子化した音群の中で新しい音響に出会うことになります。
(展覧会におけるハンドアウト資料より一部を編集して収録)
サウンドトロニクス・テクノロジー
soundtronicsは録音を行いながら音響レベルを検知し、同時に再生を行うことを基本動作としている。この基本動作から様々なアプリケーションが引き出されており、現在のsoundtronicsは以下のラインナップを有している。
- type-A soundtronicsの出発点となったプロトタイプ的存在。グラフィカルな表示は最小限であり、設定可能なパラメータも数種類しかない。攻撃的な音響を形成する傾向にある。
- type-B type-Aに比べてグラフィカルな表示が充実した。設定可能なパラメータ数は30近くになり、専用のエディタを内蔵している。また複数のパラメータセットを持つことができ、それを時間経過とともに自動的に切り替えるようになっている。このため多彩な動作の設定が可能になった。
- type-Ba 基本動作はtype-Bと同等であるが、文字列が横スクロールするグラフィック表示に変更された。表示される文字は録音レベルに対応するが、その連続的な変換結果から有意味な文字列を見出そうとするアルゴリズムが組み込まれている。
- type-C type-A〜Bは音響をメモリ上に記録するが、type-Cではディスク上にファイルとして記録するように変更された。また録音された音響を時系列に沿って再生するオプションも追加された。この結果、例えば、type-Cは大容量のハードディスクを使って24時間ディレイ--昨日の音が聞こえて来る--として利用することもできる。
アクトリスト
- 1994.03.19 パフォーマンス「soundtronics field」 大阪デザイン専門学校(大阪) 出演:赤松正行 12台のsoundtronics-type Aを使用
- 1995.01.18〜03.05 展覧会「soundtronics field」 ジーベック・ホワイエ(神戸)--震災のため中止 24台のsoundtronics-type Bを使用
- 1995.03.08〜04.16 展覧会「soundtronics field」 T-Brain Club(東京) 20台のsoundtronics-type Bを使用
- 1995.03.26 パフォーマンス「巻上公一 VS soundtronics」 T-Brain Club(東京) 出演:巻上公一、有馬寿純、ヲノサトル、赤松正行 4台のsoundtronics-type Bを使用
- 1995.05.05 展覧会「soundtronics in a box」 京都市立美術館(京都) 1台のsoundtronics-type Bを使用
- 1995.09.22 パフォーマンス「soundtronics circus」 キタノ・サーカス(神戸) 出演:Haco、クリストファー、赤松正行 2台のsoundtronics-type Bを使用
- 1995.11.21〜11.25 展覧会「Trilogy」 ヴォイス・ギャラリー(京都) 1台のsoundtronics-type Baを使用
- 1996.01.27 展覧会「Acte Kobe 2」 ジーベック・ホール(神戸) 1台のsoundtronics-type Bを使用
- 1996.03.10 パフォーマンス「Black Hole」 Uplink Factory(東京) 出演:有馬寿純、足立智美 1台のsoundtronics-type Bを使用
- 1996.06.13 パフォーマンス「ManMade.2〜soundtronics boogie」 バートンホール(西宮) 出演:巻上公一、Yuko Nexus6、ルイス松尾、赤松正行 4台のsoundtronics-type Bを使用
- 1996.09.17 パフォーマンス「ManMade.5〜A/D/V/P」 バートンホール(西宮) 出演:吉田アミ、前林明次 1台のsoundtronics-type Bを使用
インタビュー
レビュー
- 「同時録音・編集・再生による理想的音響空間」(美術出版社発行「デザインの現場」誌1995年6月号)
- 「関係性のサウンドアート」(MARS Project発行「VALICircus」誌Vol.1)
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