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概要「The Watchplate」は監視カメラ映像を蓄積し、任意の時刻の映像を呼び出すとともに、様々な時刻の映像を並列させて鑑賞する作品である。監視カメラは自動的に回転しながら、夜間には赤外線映像となり、常に周囲の状況を捉える。映像を記録する期間は、諸条件によって異なるが、1週間から1ヶ月間に設定される。 内容「The Watchplate」の撮影装置として、自動回転機構と夜間の赤外線撮影機能を持ったビデオ・カメラを用い、その映像を常に保存していく。そして、鑑賞者が指示した時刻、または鑑賞者不在時にはランダムに変化する時刻の映像が再生され続ける。 表示装置としては、プラズマ・ディスプレイを水平に設置し、設置台の上に大きなプレートが載っているような印象を持たせている。このプレートは平坦で単層の映像フレームのアナロジーであり、画面上の表示も映像をプレートのように見せている。 表示する映像には撮影時刻を刻印しており、ある時刻の映像を画面一杯に表示することと、複数の時刻の映像をサムネールのように表示することを繰り返す。すべての映像は仮想3次元空間に浮かぶプレートに描画し、これらのプレートはゆるやかに移動と回転を続ける。 鑑賞者は、小さなダイアル型のコントローラを回転させることによって、表示する映像の時刻を設定できる。鑑賞者が時刻を数秒前に設定すれば、自分の姿を見いだすであろうし、数分前、数時間前、あるいは数日前に同じ場所で何があったかを知ることができる。 サムネール的な複数時刻の同時表示では、指定時刻の前後の映像を表示するが、その時間間隔は次第に広がるようになっている。様々な時刻の映像を並列的に見ることは、全事象を知覚するような感覚を与えることになる。 考察「The Watchplate」は、本質的に監視カメラおよび監視映像の記録再生装置に他ならない。全地球レベルでの監視体制、そして個人レベルでの監視手段が広まっているが、一方で、そのような監視に無頓着である人々も多い。このような状況の是非はともかくとして、「The Watchplate」は、あからさまな監視状況を見せることが第一義であった。 ただし、単純に監視カメラと映像モニタを顕在化させるだけでは不十分である。重要なのは、監視映像が蓄積され、お望みの時刻の映像を容易に呼び戻せることである。何日も前の光景を瞬時に甦らせてこそ、監視映像の暴力性や監視者の優越性に思い当たることができるからである。 従って、この作品において、鑑賞者は監視映像を単純に楽しむとともに、無差別に大量に蓄積される映像の意味を探ることになる。それは全世界的な監視状況へと敷延することが可能であり、現代社会に対する自らの立ち位置を考察することにも繋がるに違いない。 なお、この作品は昼夜を問わず、また鑑賞者の有無に関わらず、監視映像の記録と再生を続ける。夜になって無人の暗い会場で青白い画面が光り、昼間になって夜の無人の光景が甦る、そのような光景こそが、この作品にふさわしいのかもしれない。 参考:監視カメラと携帯テレビ電話によるパフォーマンス「Opticon」 機材構成
展示 会期:2005年3月6日(日)〜21日(月)
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