過去4回に開催されてきたDSPサマースクールはMAX/MSP中心に構成されてきた。Max/MSPとは、マルチメディア、DPSプログラミング、アルゴリズムなど、多種にわたるプログラミングがグラフィック・インターフェースを通して容易に可能としてくれる開発環境でもありソフトウェアでもある。近年では、リアルタイムでのディジタル・ビデオの映像処理を初め、インターネットやグラフィカル・インターフェースなども充実している。
そのMax/MSPは開発者や研究者はもちろん、多くのアーティストにも広く使われている。DSPサマースクールではこれらの広いユーザーを対象にして、ワークショップ、レクチャー、プレゼンテーション、応用されたアーティスティックな作品発表に勤めてきた。 さて、来年の開催にあたり、例年の開催時期を夏から春に変えて開催される。その理由の一つとして、例えば学生など夏休みを利用しての受講者のみではなく、できるだけ多くの一般にも参加の機会を持ってもらう点が挙げられる。もう一つには、例年の大規模で大掛かりな開催とは異なり、少し気軽で親しみ易い内容、一般にも開かれた開催の機会も設けてはどうかというアイデアにも基づいている。 例年が音響合成、映像処理、アルゴリズム、そしてそれらのアーティスティックな作品への応用など、むしろソフトの部分が課題となってきた。今回はそのソフト系のみの発想から離れ、ハードを十分に応用した考えに基づいている。 実質的には、開催のテーマにはならなかったものの、長い間、身体の動きを認知してコンピューターを遠隔操作するインターフェースなどのハード系に十分関わってきた。その「インプット」のみではなく、コンピューターからの「アウトプット」にロボットを繋げてMax/MSPが可能としてくれる機能を応用してロボットを操作しようとするものである。
開催中には、Max/MSPを学ぶ段階で、ロボットを応用にして学習する。実際に手を動しながらのワークショップでは、ロボットのキットを組み立て、さらに、Max/MSPからのプログラミングにより、より高度に、そして柔軟なロボットとへと高めることになる。同時に、このような実践的なプログラミングを通して、より早く、そして、深く、ロボットの基礎とMax/MSPのプログラミングも習得することができる。
さらに、現在、独自のロボットをロボット会社と開発中である。このロボットは開催期間に発表され、実際に作品などへの応用も発表される。また、参加者にもMax/MSPによる操作の機会にも触れることになるだろう。このロボットは、二足歩行や自ら物を認識して判断するというタイプのロボットではなく、身体の形を持ちながら、人間の音楽演奏家の行為を模倣することによって、アコースティックな楽器を人間に代わって演奏するものである。今回は、特に打楽器の開発に注目して、5台のロボットが合奏するものである。Max/MSPの環境を生かして、容易に音楽の作曲をできることになる。また、すでにこのMax/MSPのために用意されている多数のライブラリーを応用することにより、複雑な動きを操作するアルゴリズムもかける。さらには、ビデオ・ライブラリーを応用して、人間が実際に楽器を手にすることなく、空中で楽器を演奏する行為のふりをするだけで、人間の動きを認知し、さらにMax/MSPに繋げられているロボットが実際に演奏をしてみせる。さらには、Max/MSPにすでに用意されている、TCP/IPを使って、インターネットを通して、世界のどこかの人物がこれらのロボットを遠隔地から演奏させることもできる。
開催中には、ロボット開発に関わっている研究者が音楽に応用されたロボットやヒューマノイドのロボットの研究をプレゼンテーションする。また、最終日には、ロボットのキットとそのためのMax/MSPのプログラミングの成果の発表、そして、上記の独自に開発されたロボットの作品発表と展示が行われる予定である。 |